
東京都で7月19日の新型コロナ新規感染者数は189人、20日は168人と依然として高いが、300人近くに達した16日から18日までの3日間よりは少し、減少している。新規感染確認者数は行ったPCR検査数などの検査数と検査の結果で決まる陽性率に左右される。その日1日の東京都の新規感染者数は小池百合子都知事が午後の遅くない時期に、報道機関に流しているようだが、行ったPCR検査数は流していないようだ。ただし、当日の夜の20時30分頃に東京都のサイトである程度公表される。これを見ると7日間移動平均で1日当たり感染者数は今なお200人を超え、陽性率は6%を上回っている。東京大学を始め全国の大学・研究機関で組織されている抗体検査協議会の事実上の責任者(アドバイザー)である東大先端科学技術センターの児玉龍彦東大名誉教授が「東京・埼玉型」に変異・拡大の可能性という重要な指摘もあり、さらなる注視が必要だ。
小池百合子都知事の言い訳の基本は、「PCR検査を他のどの道府県よりも積極的に行っているので、新規感染者(陽性判定者)が発見され、多くなるのは当然」という内容である。
※追記:2020年7月21日16時56分のNHKのWebサイトによると、「東京都によりますと、21日、都内で新たに237人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです」という。3日ぶりに200人超えとなった。


ただし、日本は世界の各国に比べ、PCR検査数が非常に少ない特異な国であることで有名だ。その中で、小池知事が他の道府県よりもPCR検査数を多く行っていると言ってもあまり大きな意味はない。重要なことは、①現在、東京都を柱とする首都圏で再拡大している新型コロナウイルスがどのような遺伝子構造を持っているのかということ②PCR検査数とその検査の結果陽性と判定された新規感染確認者数の割合(陽性率)−だ。
まず後者について。東京都は毎日午後20時半頃、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/で「モニタリング数値」を発表している。ただし、陽性率の時系列的なグラフは1月24日から5月12日までのものしか見当たらない(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/youseiritsu.files/020512youseiritsu.pdf)。
後者のグラフの内容は、次のようなものだ。
注意しておくと、陽性率はPCR検査などの検査に占める陽性判定者の割合ではなく、PCR検査などの検査数の7日間の移動平均に占める陽性判明者の7日間の移動平均の割合だ。東京オリンピック強行開催のため、3月は原則的に、体温が37.5度以上のもののみPCR検査を受けられるとの制約があったので、検査を受けた都民の方々はほとんど新型コロナウイルスに感染した方が多かったと推定されることだ。そのこともあり、陽性率もかなり高くなっている。
東京都はその後、このページを更新することなく、それ以降は「都内の最新幹線動向」と称するページを公開している。次のページhttps://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/だ。こちらのページは毎日午後8時半ころ更新されている。やや詳しいが、時系列性の公開にやや難点がある。参考までに、7月19日と20日のものをキャプチャして掲載するとつぎのようになる。
これでみると、7日間の移動平均は200人を超えており、なお、かなり高水準である。陽性率は、日によって検査数にかなりのばらつきが在るため、変動が大きいが6%を超えており、上昇傾向にあると見られる。また、PCR検査や抗原検査数は3000人前後である。東京都の人口は今年6月1日の推計で13,999,568人。およそ、1400万人=14×100万人だから、300÷14=214.2人と1日100万人当たり214.2人でしかない。
世界各国のPCR検査など検査数、新型コロナ感染者数、死亡者数をある程度リアルタイムに公表しているサイトのhttps://www.worldometers.info/coronavirus/では、2020年7月21日午前零時21分現在、日本の検査人数は1日100万人当たり5040人に過ぎない。やはり、東京都も含め、日本の検査数は異常に少ない。
米国では14万8477人、英国では19万8255人、韓国では2万8675人である。外務省の2019年8月22日のデータでは、人口が東京の半分以下の564万人でしかないシンガポールでさえ、1日当たりの検査人数は17万2487人である。また、4万8035人の新型コロナウイルス感染確認者のうち、亡くなられた方は27人と、致死率0.056%である。日本は昨日7月20日の段階でクルーズ船も含めると死亡者は1000人を超えた。

朝日デジタルが2020年7月20日18時22分に投稿した「国内コロナ死者1千人に 世界平均とほぼ変わらぬ死亡率」と題する記事によると、「国内の感染者数は19日午後9時時点で、クルーズ船を含めて計2万6212人に上る。英オックスフォード大などの集計によると、20日時点で日本の死亡率は約3・9%。世界平均は約4・2%で、日本はさほど変わらない。アジアの他の国や地域は中国で約5・4%、韓国で約2・2%、台湾で約1・5%になっている」。世界の諸地域に比べて感染者が少ないと言われる東アジア地域では、日本はインドネシア、フィリピンに次いで、感染者が多いなどワースト3位だ。
安倍晋三首相は「日本型モデルは成功した」と自画自賛していた(ただし、閉会中国会審議には逃げ回って応じない)が、これは実情をまったく知らない人の言うことで、一国の総理大臣としては失格だ。政府=安倍政権は今に至るも、日本の新型コロナウイルス感染者の実態を掴めていないのである。
こうした中で、首都圏を中心に7月に入って首都圏を中心に新型コロナウイルス感染の再拡大がかなりの規模で起こっている。注意を要するのは、このウイルスはRNA型で変異が早い。東京大学先端科学センターで抗体検査協議会の責任者を行っている児玉龍彦東大名誉教授の分析によると、「武漢型」、「欧州型」とも異なる「東京・埼玉型」の変異ウイルスが蔓延し、首都圏に拡大、全国に広がっているとのことだ。
児玉名誉教授はこの点について、16日の予算委員会での閉会中審議で参考人として政府に警告している。武漢型や欧州型のウイルスに感染した患者が感染を拡大する「集団感染(クラスター)」とは異なり、「東京・埼玉型」のウイルスに感染した無症状感染者のウイルスが変異し、新宿区など東京が「東京・埼玉型」のウイルス拡大の震源地(エピセンター)になっている可能性が高いと警告した。
ただし、西村康稔経済再生担当相はこの発言の重大性について全く理解ができなかったようだ。今週以降の東京都、日本国内の感染拡大状況について、感染症法や改正インフル特措法に縛られることなく、柔軟な対処(保健所を通すことなく、医療機関や大学の研究機関などあらゆる検査可能組織で検査を実施できるようにすること)が必要な段階に来ている。
※追記:22日16時12分:児玉龍彦東大名誉教授が7月3日に日本記者クラブで行った講演で、精密医学・制御工学・情報工学など先端技術を駆使して、東京・新宿区などエピセンターになっている地域で大規模な抗体検査・PCR検査・抗原検査を行うことが急務だとの見解を示していた。特に、「無症状新型ウイルスコロナ感染者」にもさまざまなタイプの方がおられ、その感染者のタイプのある感染者の方がスプレッダー(感染拡大者)になり、エピセンター(感染源)になっているため、「無症状」の方の精密検査を行うことが感染拡大と経済活動の最下位を両立させるうえで、重要だとしている。下図が、これまでの精密抗体検査で判明したことだ。
ノイズというのは、「偽陽性」のことで、抗体を有していないのに「有している」と判定すること。東アジア地域で、新型コロナウイルス感染者の数が少ないのは、各種のコロナウイルスの発生で、「交差免疫」が作られているからだと指摘した。日本記者クラブでの会見は次のYoutubeで視聴できる。なお、通信回線によってはたまに進行が中断されることがあります。
なお、日本共産党の田村智子副委員長兼政策委員長は本日22日に行った記者会見で、閉会中の国会で週に一度行われている「与野党連絡協議会」の場で、厚生労働省と内閣府が全国の地方自治体から報告されている検査数や新規感染確認者のデータを紙の上で足し算しているだけで、全国に拡大している新型コロナウイルスの感染状況の把握について、科学的な立場からの検証を行っていないことを明らかにした。そのうえで、早急に臨時国会の開催を立憲、国民、社民党とともに求めていくと語った。