東アジアの今後、東アジア共同体の形成へー韓国、日本に言葉の真の意味でのポピュリズム政党による右派政権の樹立が必要

韓国で今年2024年の12月に入って、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領によって非常事態戒厳令(非常戒厳)が発令されたが、国軍(特に、国会占領を命ぜられた特殊部隊)による支持が得られなかったため、野党「共に民主党」によって国会(一院制、定数300議席)が開かれてしまい、「非常戒厳」解除の議案が過半数を上回る賛成で可決されてしまい、非常戒厳は腰砕けに終わった。その後、ユン大統領に対する弾劾決議案が「共に民主党」によって総儀席の三分の二を上回る賛成多数で可決されてしまい、憲法の規定により、大統領は弾劾されてしまった。

現在、ユン大統領は職務停止中で、憲法裁判所により弾劾の妥当性について裁判が行われており、裁判で弾劾妥当の判断が下されば(9人中6人の賛成が必要)、大統領は罷免される。職務停止になったユン大統領の代行は、ハン・ドクス(韓悳洙)首相が勤めていたが、ハン首相にも弾劾決議案が提出され、12月27日、憲法の規定によって過半数の賛成で弾劾決議案が可決されてしまった。現在、大統領代行はチェ・サンモク(崔相穆)副首相兼企画財政相が務めるという異例の事態になっている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241228/k10014681881000.html)。憲法裁判所で罷免の判断が下されなければ、最初からやり直しになり、政治空白が長期化する。

余談だが、韓国全羅南道(チョルラナムド)の務安(ムアン)国際空港で29日、タイ発の格安航空機(7C2216便=ボーイング737)の着陸事故が発生、179人の尊い生命を失った。哀悼の意を捧げたい。だが韓国国内は今、非常事態に直面していると言える。

ムアン空港での韓国機着陸失敗事故(AFPBBによる)

さて、韓国の今回の非常事態の勃発の理由として、サイト管理者としては二つの原因があると思っている。その第一は、今回の非常戒厳発令は、キム・ヨンヒョン(金龍顕)国防相(当時)がユン・ソンニョル大統領をそそのかしたことによるものとされているが、非常戒厳発令という最重要問題に対しては、ユン大統領が検事総長出身で、根っからの政治家ではなかったとしても、対米従属国家の韓国が「知らぬ、存ぜず」を決め込んでいるけれども、米国のバイデン政権に打診しなかったはずはない。

実際のところは韓国国軍を指揮する在韓米軍に対して、米国のバイデン政権が非常戒厳を否定し、協力させなかったことにあるのだろう。これは、市民が大挙したこともあるが、国会を占拠すべき韓国国軍の特殊部隊の動きが鈍かったことに現れている。バイデン政権が、少数与党に陥ったことで韓国政府が機能不全の苦境に陥っていることを直視し、在韓米軍に韓国国軍に対する協力を指示していたなら、非常戒厳発令は成功しただろう。日本でも、成功を期待した純粋右派の人々は少なくない。

今回の非常戒厳の失敗の第二の原因については、外務省出身の孫崎享氏が鳩山由紀夫元(友紀夫)首相との東アジア共同体チャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=s6-eaK6aKlM、20分過ぎ)での対談で示している。具体的には、韓国のユン政権(当時)が、1905年(明治38年)に大日本帝国と大韓帝国の間で結んだ乙巳保護条約(いっしほごじょうやく)による事実上の日本帝国による大韓帝国(現在の韓国と北朝鮮の両国からなる当時の李氏朝鮮後の朝鮮半島国家)の植民地支配に対して、過去の問題として誠実な対応を示してこなかったことだ。

チャンネル(番組)ではその一例として、今年2024年の7月27日、佐渡の金山を世界遺産として承認した際の日韓両国の不手際の問題を上げている。NHKは、次のように報道している(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240727/k10014526151000.html)。

「佐渡島の金山」をめぐっては韓国政府が「朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされた場所だ」として反発し、日韓両政府が話し合いを続けてきた経緯がありますが、審議では、韓国も委員国の一つとして登録に同意しました。登録決定を受けて日本政府の代表は「『佐渡島の金山』におけるすべての労働者、特に朝鮮半島出身労働者を誠実に記憶にとどめつつ、韓国と緊密に協議しながら、『佐渡島の金山』の全体の歴史を包括的に扱う説明・展示戦略および施設を強化すべく引き続き努力していく」などと述べました。

しかし、日韓両国政府とも「未来志向の日韓関係」を強調するあまり、朝鮮半島出身の労働者に対する強制労働も含めた佐渡金山の歴史全体を、公平かつ公正に記録していないようだ。こうした例は枚挙にいとまがない。日本政府としては、過去の朝鮮半島の植民地支配に対して、韓国・北朝鮮の国民の歴史的心情を踏まえて誠実な対応をすべきであり、それを踏まえた未来志向の日韓・日朝関係を築いて行くべきだろう。けれども、米国(バイデン政権)に「日韓米同盟」の構築を急がされたあまり、そこがすっかりおざなりになってしまった。

これでは、真の未来志向の「日韓米同盟」を築くことはできない。その根本的な原因は、表向き、英米ディープステート内のリベラル全体主義独裁政権体制の傘下にある米国政府(民主党政権にその傾向が強く、現在ではバイデン政権)が、欧州諸国や日韓両国を「同盟関係」にあると強調しながら、実際のところはこれら米側陣営諸国を「対米従属国家」として扱ってきたことにある。

これに加えて、韓国の経済情勢の悪化や合計特殊出生率が0.6にとどまるなど少子・高齢化の社会不安が高まっており、現政権に対する国民の不満が爆発していることが挙げられる。こうした政治混迷の状況を打破するためには、言葉の真の意味でのポピュリズム政党(社会不安に対処するため、政治変革を目指す勢力が、既成の権力構造やエリート層を批判し、国民に訴えてその主張の実現を目指す運動を展開する民衆のための政党)による右派政権の樹立が必要である。

この右派政権で最大のものが、今年11月の大統領選挙で次期大統領に当選したトランプ次期政権(来年1月20日に正式発足)である。トランプ次期大統領はイスラエルのシオニストであるネタニヤフ首相とともに、リベラル全体主義であった英米ディープステートを打倒し、米国単独支配ではない多極化世界を築こうとしている。欧州では、イタリアのメローニ首相率いる右派政権が既に誕生しているが、最大の大国であるドイツでも、社会民主党を中心とした連立政権が崩壊した中で、「国民の選択肢(AfD)」が着実に支持勢力を拡大、今やトランプ次期大統領の片腕になっているイーロン・マスク氏もAfDを強く支持している(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-30/SP9HKPDWX2PS00)。

また、ドイツに次ぐ大国のフランスでもマリーヌ・ルペン氏率いるポピュリズム政党の「国民連合」が、マクロン大統領の組織した中道右派政党「再生」を凌ぐ支持を集めている。トルコのエルドアン大統領はイスラエルと裏でつながっている(経済支援を行っている)し、プーチン大統領やトランプ次期大統領とも仲が良い。ハンガリーのオルバン首相も同様だ。NATOのウクライナ派を強く牽制している。7月4日の総選挙で保守党に圧勝した英国のスターマー首相率いる労働党政権は相変わらずだが、こっそりと中国との関係改善に努め、欧州エスタブリッシュメント政権の凋落に備えている(https://jp.reuters.com/world/security/Z5V7PJYNR5KIHG4DL6R4B4RGIQ-2024-12-17/)。

英労働党のスターマー政権が中国との関係を改善し、対中審査の批判トーンを抑える方向とするなど戦略を一転させたことがロイターの取材で分かった。スターマー政権は経済成長を重視しており、貿易面で重要な中国との関係立て直しに向け姿勢を軟化する方針だ。

労働党は7月の政権奪還前、中国との各種関係性やサプライチェーン(供給網)を巡り、英国最大の長期的脅威と情報機関に見なされた中国に関し、1年超にわたる厳密な審査を実行する強硬姿勢を表明していた。

米側陣営の欧州諸国では、既成のメディアから「極右政党」と危険視されながら、言葉の真の意味での「右派ポピュリズム政党」が国民からの支持を大幅に拡大している。米国のトランプ次期政権と同じように、今後数年間でこれら右派政党が政権を担う政党に発展するだろう。日韓両国では言葉の真の意味での「右派ポピュリズム政党」は誕生していない。日本では、宏池会の岸田文雄やその傘下の石破茂政権は従来のリベラル政党の域を出ていない。だから、トランプ次期大統領から相手にされない。韓国の「共に民主党」は、フランスの左派政党「不服従のフランス」ら4党からなる左派連合人民戦線のように、左派志向が強く、真の意味での国民政党には転換できていない。ただし、韓国でも日本でも、来年は大統領選挙や総選挙が行われると見られており、場合によっては新しい動きが台頭する可能性がないわけではない。

田中宇氏は、12月22日に投稿・公開した「トランプと今後の世界」(https://tanakanews.com/241222trump.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=)で、「トランプは多極化を推進する。ウクライナは、停戦しそうだが終戦せず、欧米の対露制裁が非米側を結束させ、多極化と西欧の自滅が進む構図が継続される。トランプは、対米従属の諸国を冷遇もしくは非米化に押しやる。朝鮮半島の和解を仲裁し、韓国から米軍が出ていく。日本も、中国側に押しやられる。日本自身は、トランプから何をされているのか、世界がどう動いているのか、今後も気づかず、米国との関係以外に何も見ようとしない状況が続く。McCarthyism, European style: The elite crackdown on Ukraine dissent」と現実を直視している。

マックス・ウェーバーとカール・マルクス(ユダヤ人)

しかし、世界が文字通り大激動期に突入する来年2025年以降、日本でもマックス・ウェーバーの歴史社会学を発展させ、宗教・政治・経済・軍事を相互に関連させた新しい次元の世界平和運動を推進する勢力が台頭してくるだろう。

 

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