トランプ2.0政権、米国単独覇権主義を放棄し南北米大陸を活動の基盤に

まだ米国現政権のバイデン政権は、以前の米国政権とともに、かつて大英帝国の栄華を誇った英国から「大帝国による世界支配」のノウハウを授かり、米国単独支配体制を維持してきた。しかし、現在に至り、米国は単独支配体制を維持し続ける能力がなくなった。巨額の財政赤字、大幅な経常赤字、世界最大の対外純債務残高は、ドルに対する魅力をなくする。これまでは、米国に輸出の限りを尽くして大幅な対米経常黒字を獲得していた中国はこれまで、獲得したドルで米国の10年物を中心に米国債を大量に買い取り、ドルを米国に還流させていたが、ここ数年、米国債の保有残高を減らしている(https://www.jetro.go.jp/view_interface.php?blockId=34098083)。

日本貿易振興会(JETRO)による

中国の米国債保有残高が減少しているのは、習近平政権がもはや、ドルが基軸通貨として世界各国から受け入れられることはなくなったと見ているのではないか。中国が2019年後半から日本に米国債保有高世界一の座を、かつてのように日本に譲ったのは、ドルに対する潜在的な不信認が募ってきているからだろう。米国の指標銘柄である10年物国債金利が上昇(債券価格は下落)しているのも、中国政府にとっては気がかりな材料だろう(https://jp.investing.com/rates-bonds/u.s.-10-year-bond-yield)。

なお、これまで米国に忠実(対米隷属志向)であった日本は、従来なら保有米国債を売却することは許されなかった。例えば、自民党竹下派七奉行の第一人者であった橋本龍太郎首相(当時)。橋本首相は、1997年に訪米したことがあった。当時は、米国大統領がクリントン大統領、ロシアはエリツィン大統領の時代。その時、米国での講演会で橋本首相は、「ここに連邦準備理事会やニューヨーク連銀の関係者はいないでしょうね。実は、何回か、財務省証券を大幅に売りたいという誘惑に駆られたことがある。ミッキー・カンター(元米通商代表部=USTR=代表)とやりあった時や、米国のみなさんが国際基軸通貨としての(注:ドルの)価値にあまり関心がなかった時だ。(米国債保有は)確かに資金の面では得な選択ではない。むしろ、証券を売却し、金による外貨準備をする選択肢もあった。しかし、仮に日本政府が一度に放出したら米国経済への影響は大きなものにならないか」とつい、語ってしまったことがあった。

橋本首相のこの発言は、米紙ニューヨーク・タイムズに「日本は、米国債を売り、金を買いたい衝動に駆られることがあるかもしれない、との橋本首相のコメントにより、ダウ平均はブラックマンデー以来、最大級の下げを記録した。日本政府は、その後、同発言を否定している」と書かれてしまった(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB310Y10R30C23A7000000/)。その後、第18回参議院議員通常選挙での自民党惨敗(改選議席数60議席から44議席に大幅減少)を受け、引責辞任した。いさぎよい進退ではあったが、橋本首相は自社さ三党連立政権から自民党単独政権に復帰した立役者であったことや、発言にブレはあったけれども、次の小渕敬三内閣のバブル崩壊不況に対抗する積極財政を先取りしていた面もあった。

選挙は参議院選挙であり、景気回復、経済成長の軌道に乗せるという責任を果たす形で、首相の座にとどまることも可能であったのではないか。それが突然の辞任になり、2001年の自民党総裁選挙でも、「自民党をぶっ壊す」と言って新自由主義路線をひた走った小泉純一郎候補に破れ、2005年に政界引退し、2006年に寂しく没した。サイト管理者としては、当時の日本政府は米国の対米隷属政権だったことから、保有米国債を売り払うなどのことは、基軸通貨ドルに対する信認の低下につながるため、行ってはならないし、言ってもいけない。米国政権の逆鱗に触れるからだ。日本では鉄則的に、「トモダチに貸した金は帰ってこない」のである。恐らく、橋本首相は米国傀儡の大蔵省(現財務省)に潰されたのだろう。

ところが、上の図に見るように米国債の保有残高は減少している。これは、保有米国債をドル売り・円買いの介入資金として使用することを、単独覇権国としての力の低下のため、米国としても認めざるを得なくなっていることの表れだろう。保有米国債の売却と並ぶ、基軸通貨ドルの信認が低下しているもうひとつの現象は、金地金相場の再上昇である(https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/)。

トランプ再選後、金地金相場は一時的に下落したが、ここに来て再び上昇している。金地金相場は、1トロイオンス(約31グラム)=2700ドル超えまで進んだが、一時下落しつつも再び上昇局面に転換している。橋本首相(当時)の発言ではないが、やはり、ドルの天敵は金地金相場である。貴金属、特に、金地金相場はロンドン貴金属市場協会(LBMA)が相場決定の最高権威であるとされていたが、中国の貴金属商がLBMAから撤退したため、本来の市場価格よりは安くは売れなくなった。LBMAで安く買って、中国の貴金属商で高く売れば、売買差益が出るからだ(裁定取引)。

従来は、各国の中央銀行の中央銀行である国債決済銀行(BIS)とLBMAが結託して、1トロイオンス=2000ドルが金地金相場の上限とされていたが、それはもはや昔のことで、公正な市場価格で取引が行われるようになっている。だから、金相場は2700ドルを突破して、3000ドル超を目指す展開になって行く。米国の国債金利の上昇(国債相場は下落)と金地金相場の上昇基調は、「基軸通貨ドル」の信認を脅かす。

だから、トランプ第二次政権では、イーロン・マスク氏らが事実上の責任者になる「政府効率化委員会」に対して、不要な省の徹底的な廃止という大きな役割を期待しているのだが、その成否はやってみないと分からない。また、現在ではドル・原油本位制でドルの基軸通貨としての信認が維持されているが、2023年の12月に中国の習近平国家主席がサウジアラビアに行き、最高権力者のモハメッド・ビン・サルムーン(MbS)皇太子兼首相と首脳会談を行い、中東産原油を人民元で購入することも可能になった。ドル基軸通貨制度にまた風穴が開いたことになる。米国もシェール・オイルやシェール・ガス(地下の頁岩=けつがん=層に含まれる天然ガスや石油のこと)を大量に産出し、輸出することはできるだろうが、OPEC+の原油や天然ガスのほうがもっと安い。

資源やエネルギー、穀物などを安く変える通貨でないと、これからは基軸通貨性を保てなくなる。ドルに対する信認が弱まってくると、米側陣営よりも非米側陣営のほうが経済が興隆する可能性が高まる。だから、トランプ次期大統領はトランプ2.0で、ドル基軸通貨体制を維持するよりも、多極化世界の中で足下の北米、中米、南米をしっかり固めようとしているのではないだろうか。その現れ始めが、カナダやパナマ運河、グリーンランドについて、米国領に編入すべきだという主張であり、「北米、中米、南米」とそれに続く「グリーンランド」を固める「米州主義」と見られる。国際情勢解説者の田中宇氏も、8日に投稿・公開した「トランプの米州主義」(https://tanakanews.com/250108america.htm、無料記事)で次のように分析している。

この解説記事は、次のリード文で始まる。「今後の米国は、世界覇権を喪失・放棄して、北米や南北米州を重視・影響圏設定する米州主義になっていく。その始まりが、これらの発言だ」。

米国側のマスコミ権威筋は、トランプの表明を米州主義の発露として全くとらえていない。そのような分析は皆無だ。トランプは冗談または頓珍漢な不合理を言っているか、もしくは、自分より弱い国を併合しようとする理不尽な帝国主義だと批判している。米国側のマスコミ権威筋は、米覇権の縮小自滅や覇権多極化を無視している。多極化と表裏一体の、トランプが米州主義に基づく言動を続けても(今のところ)全く無視されている。これまでの米国は、英国の傀儡として単独覇権を運営していた。米国が覇権を放棄して「米州の極」に転換すると、米国を握っていた英国は振り落とされて「貧乏な沖の小島」に成り下がる。それはダメなので、英国系はトランプを嫌い、多極化や覇権放棄を徹底的に無視している。'America First' meets Greenland, Taiwan, and the Panama Canal

多極派は、それを逆手にとり、諜報界傘下のマスコミ権威筋に、米覇権縮小や多極化の現実を無視させ、その一方で温暖化人為説やコロナの超愚策や覚醒運動など米側を自滅させるリベラル全体主義を急拡大させることで、米国側が多極化を阻止せず自滅・破綻していくように仕向けている。米国側のほとんどの人々は、多極化・米覇権自滅に気づいていない(諜報界DSが気づかせてくれない)。だから、多極化の一環として、トランプが米州主義に基づいてグリーンランドやパナマ運河やカナダの併合を言い出していることの意味にも気づいていない。

世界最大の島・グリーンランド

ウイキペディアによると、グリーンランドは「1721年から1953年まではデンマークの植民地で、1979年5月には自治権を獲得。歴史的、地理的、また国家としての特殊性からデンマーク王国の一部としての自治政府が置かれ、広範な自治が認められている。2009年には、自治法の改正と自治協定の締結が行われ、政治的な権限と責任がデンマーク政府からグリーンランド政府へと移譲された」。グリーランドはデンマーク政府ではなくて、グリーランド政府が自治権を握る。米国が支援すれば、グリーランド政府はデンマーク政府よりも、トランプ2.0になびくだろう。

なお、グリーランドの地政学的意味は、「ロシア、そして中国にとっても、交通の要所であり軍事安全保障の要所ということで、グリーンランドがとても重要になってきた」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250110/k10014690151000.html)というところにあるようだ。

カナダは大英帝国を構成していたが、ウクライナを指令する英国に属するよりも、米国と友好関係を結ぶほうが良いのかも知れない。極端に言えば、米国の51番目の州になることだ。サイト管理者もハリファクス・サミットに取材に行ったことがある。とても広大だし、「赤毛のアン」の「プリンス・エドワード島」にも行った。自然がとても美しいところだ。中南米諸国もカトリック教徒の国々である。いずれにしても、これまで主流であったエスタブリッシュメントのリベラル左派全体主義独裁政権は崩壊の坂を転げ始めた。崩壊の速度はどんどん加速していくだろう。トランプ2.0は、世界が多極化文明時代入りすることを促進する政権であることを認識する必要がある。

トランプ2.0は米側陣営と非米側陣営の鎖国的対立を乗り越え多極化文明調和の推進へ

トランプ2.0は、トランプ1.0を除く歴代の米国政権が、大英帝国の世界支配手法を伝授されて構築したけれどももはや維持が不可能になった米国単独世界支配覇権体制を崩壊させる。毛騎士的に転換期に遭遇しているが、その転換点になった原因はまず第一に、米国の巨額の財政赤字と大幅で異常な経常赤字、ドル基軸通貨体制を維持するためにバブル経済体制を築いてドルを自国に還流させた結果として、世界最大の膨大な対外純債務が発生したことだ。

これらは、米英のディープステート=諜報界が米国単独支配体制維持のため、軍産複合体に巨大な利便性を与えたことによるものだ。軍産複合体については、第二次世界大戦時の連合国最高司令官として「ノルマンジー上陸作戦」を成功させ、同大戦を勝利に導いたアイゼンハワー大統領が離任時の1961年1月17日、その重大な弊害を警告していた。なお、米国は基本的に先端産業から海外諸国に直接投資を行う「米国型多国籍企業化」を行ったために、バブル経済の「構築」に精力を注いだこともあって、国内産業の空洞化が生じたことも、米国経済の衰退に拍車をかけた(一橋大学の教授などを歴任した小島清の指摘)ことも忘れてはならない。

第二に、温室効果ガス説(石油や天然ガスなどの化石燃料から排出される二酸化炭素で地球の気温が上昇しているという説)を盲目的に信じて、化石燃料のエネルギー源としての利用を徹底的に否定し、1997年の京都議定書を経て2015年のパリ協定(「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という内容が骨子)で、当時の先進諸国から全世界の諸国に至るまで、異常な化石燃料の削減目標とその実施が強要されていることだ。経済学者出身で、国内外の政治・軍事情勢にも詳しい植草一秀氏などによると、産業革命以前にも地球が温暖化した時代はあったが、地球環境が破壊されるほど温暖化がどんどん進行したという歴史的事実はない。

国際情勢解説者の田中宇氏は、2025年1月2日に「地球温暖化は超間抜け」(https://tanakanews.com/250102ondan.htm、無料記事)という記事を投稿・公開し、「石油ガス(注意:石油と天然ガス)の利用を減らしても、気候の変動具合を変えられない。気候変動を放置しても、気候危機にならない。二酸化炭素排出の削減は、地球環境の改善にならない。人為説の信奉は環境保護にならない。地球温暖化問題は、最も間抜けな国際政治案件の一つだ」とし、「人為説の『根拠』は、米英の学者が作ったコンピューターのシミュレーションモデルだ。モデルは、どのようにでも作れる。人為説を『立証』するために、それらしいモデルを作るという本末転倒の不正が行われていたことが暴露され「クライメートゲート」として2009年に問題になったが、欧米日のマスコミはほとんど報道せず無視した。地球温暖化めぐる歪曲と暗闘」と酷評している。

太陽光や風力による発電は規模が小さく、エネルギー源の主力にはなり得ない。原子力発電というのもあるが、これは「トイレのない老朽化マンション」のようなものだ。人類に有害な放射性廃棄物の処理方法は、発見・発明されていない。日本政府が「処理水」と読び、福島第一原発から福島沖に放出され続けている「汚染水」は、その放出量に今のところ際限がないから、中国政府など海外諸国がクレームを出している(最近は、信用度が明らかに低下し、公正さと公平さに欠ける日本のメディアでは、日本政府の指令があるのかも知れないが、あまり報道されなくなった)。

現代社会での自動車の主力はやはり、内燃車(燃料をシリンダー内で燃焼させて発生する熱エネルギーによって動力を取り出す自動車のことで、ガソリン車やディーゼル車、ガスタービン車など)だ。電気自動車(燃料電池車)の開発・製造・普及に力を入れるのも悪くないが、①一回の充電による走行距離は非常に短く、内燃者車に全く及ばない②充電スタンドがほとんど普及していない③充電時間が長すぎる④充電池が高すぎるーなどの問題があり、内燃車には代替できない。トランプ次期大統領も、バイデン大統領が否定した、新たな石油や天然ガスであるシェール・オイルやシェール・ガスを掘って彫りまくることを選挙期間中に米国民に訴えている。理想を言えば、エネルギー問題の解決は、「核融合エネルギー」の開発・生産しかないだろう。

米国単独派遣体制を崩壊に導いた第三の理由は、世界保健機構(WHO)が強力な権限を持った「新型コロナ」対策(遺伝子ワクチン接種の強要や都市封鎖など)である。そもそも、「新型コロナ」の発生源自体が不明である。昨年12月4日、「新型コロナウイルス流行に関する米下院特別小委員会は、中国・武漢の研究所での事故がパンデミックを引き起こしたウイルスの起源だとする最終報告書を公表した。一方で、同特別小員会は下院で多数を占める共和党議員が委員長を務めており、民主党側は『ウイルスの起源や関連する知識を深められるような新たな情報はなかった』と批判している(『コロナの起源「中国研究所の事故」』日本経済新聞2024年12月5日)」(https://diamond.jp/articles/-/355484)。

バイデン大統領は、中国で発生した新型コロナに関する汚職疑惑やウクライナ国内で発生した汚職問題など、国際的な汚職疑惑「ハンター事件」を引き起こし、銃の購入や所持をめぐる連邦法違反の事件刑事裁判2件で有罪になった次男のハンター・バイデン氏に対して昨年12月2日、大統領としての公約に違反して恩赦を与えた。ハンター・バイデン氏が中国やウクライナで様々な汚職疑惑を引き起こしていることは疑いのない余地がなく、さらに、コロナ対策を主導したアメリカ国立衛生研究所(NH)に属する国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が、コウモリ由来のコロナウイルスの研究のために、2014年に武漢のウイルス研究所に60万ドルの研究資金を提供していたともほぼ確実らしい(https://diamond.jp/articles/-/355484)。

共和党下院議員が委員長を務める「新型コロナウイルス流行に関する米下院特別小委員会」の主張するように、新型コロナの発生源が、ハンター・バイデン氏やファウチ所長も関係した中国の武漢研究所である可能性も否定できない。また、医学者・薬学者・科学者の間で、新型コロナウィルスに対する遺伝子ワクチンも人体に有害であるとする意見も根強く広まっている(アマゾンで多数、遺伝子ワクチン=mRNA型ワクチン=の危険性や弊害が指摘された解説書が販売されている)。

これらはすべて、トランプ2.0で米国の厚生長官に指名されたロバート・フランシス・ケネディ・ジュニア(RFKJ)氏が解明するだろう。国際情勢に詳しい及川幸久氏によると、RFKJは米国の多国籍企業化した医薬品会社から、厚生長官への任命を拒否するよう、上院議員に対するロビー活動の攻撃を受けているという。さらに、中国から広まった都市封鎖も行き過ぎで、世界的な物流網を破壊し、コストプッシュインフレの大きな原因になった。異常な都市封鎖は、米国民主党と関係が深かった上海の政治勢力を追い落とすために仕組まれたとの説もある。

そして、米国単独派遣体制を崩壊に導いた決定的な第四の理由は、ロシアによるウクライナへの「特別軍事作戦」の開始、つまり、ウクライナ戦争の勃発である。このウクライナ戦争は、米国のオバマ政権下のバイデン副大統領(当時)がビクトリア・ヌーランド国務次官補に指令し、ウクライナのネオ・ナチ勢力と組んで、2014年2月にキエフはマイダン広場でクーデターを引き起こして合法政権(ヤヌコーヴィチ政権)を打倒し、新しく樹立されたネオ・ナチ政権が東部ドンバス地方のロシア系住民の大弾圧を開始したことに始まる。この大弾圧を止めるために、翌年2015年の2月にミンスク合意Ⅱが結ばれたが、合意成立を見守ったドイツのメルケル首相(当時)らは単なる時間稼ぎに過ぎず、本気ではなかったと言われている。

そして、バイデン政権が誕生した2020年1月20日以降、ゼレンスキー政権がネオ・ナチ勢力のアゾフ大隊などと組んで、再び東部ドンバス地方のロシア系住民に対する大弾圧に乗り出した。米国のパパ・ブッシュ大統領とベーカー国務長官が、ロシアのゴルバチョフ大統領とシェワルナゼ外相に対して、NATOの東方拡大はしないと約束したことを反故にしたことと、長年の東部ドンバス地方のウクライナ住民に対するウクライナのネオ・ナチ政権の弾圧が、ロシアが「特別軍事作戦」を開始した真の理由である。プーチン政権の目的は、ウクライナ領土に対する無茶な領土的野心はない。東部ドンバス地方のロシア系ウクライナ住民は、自国民と同様の存在で、ロシア政権としても保護しなければのならないという認識から起こしたことである。

ウクライナ戦争の勃発後、世界は少子・高齢化に悩む米側陣営諸国と、IT産業に不可欠な貴金属(レアメタル)や資源・エネルギーや穀物が豊富で、人口構成もピラミッド型の非米側陣営が決定的に対立するようになった。米側陣営はたそがれのG7諸国を中心としており、非米側陣営はBRICSを中心とした諸国である。インドネシアは今年1月7日、東南アジア諸国の中で初めて、BRICSに加盟した。BRICSには2024年1月からアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピア、エジプトが正式加盟し、インドネシアも加わったことで、正式加盟国は10カ国になった。なお、サウジアラビアも加盟する意向を示していたが、米国に配慮して、友好関係を維持することにとどめている(ステルス加盟)。このほか、トルコ、アルジェリア、ベラルーシ、キューバ、ボリビア、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、タイ、ベトナム、ナイジェリア、ウガンダの12か国が、今年2025年1月1日に正式にパートナー国として加盟した。

今後もBRICSを中心に、レアメタルや資源・エネルギーが豊富で人口構成もピラミッド型の非米側陣営は興隆していくだろう。これに対して、米側陣営は欧米文明凋落の中で、新しい体制を模索していかなければならない。米側陣営諸国の中で、最も先行しているのは、昨年の大統領選挙で左派メディアの誇大なカマラ・ハリス副大統領勝利の誘導予測に反して、トランプ候補が当選した結果、トランプ次期大統領がトランプ2.0で推進する「米州主義」だ。

欧州でも、エスタブリッシュメントのリベラル左派独裁政権や左派メディアが凋落して、ワイデル党首(写真左)が率いるドイツのAfD(「国民のための選択肢」)やフランスのマリーヌ・ルペン(写真右)氏率いる「国民連合」、英国も「大英帝国」が忘れられず、リベラル左派独裁政権に固執する労働党のスターマー首相に対抗して、まだ議席数は少ないけれども、英国民の支持拡大に注力している右派勢力の「Freedom UK」がその支持を受け、勢力を伸ばしてくるようになるだろう。いずれ欧州は、右派ポピュリスト政権(国民のためにエスタブリッシュメント政権と戦う人民戦線)が政権を掌握するようになり、ロシアと和解するようになる。ウクライナは国民の支持率が大幅に低下したゼレンスキー大統領が大統領を辞任し、新政権が立って欧州のポピュリスト政権と協調するようになるだろう。

田中氏は1月9日に投稿・公開した「トランプの米州主義と日本」(https://tanakanews.com/250109japan.php、有料記事=https://tanakanews.com/intro.htm=なお1年分は1500円と購読料は半額に値下げされた)で、「世界は、すでに多極型に転換している。以前の米覇権体制は、米英が世界の政治・経済の重要事項をすべて監視し、動かしていた。他の諸国が勝手な動きをすると、米英に制裁された。しかしウクライナ開戦後、BRICSは自分たちの国際システムとして、米英に相談しないで独自のものを構築した(貿易、金融、安保など)。米英は、BRICSの国際システムに介入できない。米覇権の外側に、非米側のBRICSシステムが立ち上がった。この過程は、昨秋の露カザンBRICSサミットで一段落した。世界は昨秋、多極型に転換したといえる。BRICSが多極型世界の準備完了」としている。

米国単独派遣体制とその従属国は、トランプ2.0によって崩壊し、政治的に混迷する。トランプ次期大統領が1月20日の大統領正式就任後にプーチン大統領と首脳会談を行う準備を進めているのも、多極型文明世界の幕開けを象徴するものだろう(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250111/k10014690471000.html)。トランプ次期大統領はBRICS加盟諸国に関税引き揚げなどの報復をすると言ったが、トランプ氏も政治的立場からホンネと建前を使い分ける。BRICSを中心とした非米側陣営諸国の興隆を阻止することはできないし、米国単独覇権体制を崩壊させるからそのつもりもないだろう。なお、同氏はウクライナのゼレンスキー大統領やイェルマーク大統領府長官に指示を与えている、要注意の英国スターマー労働党政権の動向を監視していると見られる。

アメリカのトランプ次期大統領が、ロシアのプーチン大統領との首脳会談について準備していると発言したことに対し、ロシア大統領府の報道官は「歓迎すべきことだ」と述べ、前向きな姿勢を示しました。アメリカのトランプ次期大統領は9日、ロシアのプーチン大統領との首脳会談の見通しについて記者から問われたのに対し「彼は会いたがっており、われわれは準備している」と述べました。

これについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は10日、「トランプ氏は対話を通じて問題を解決する用意があると宣言しているが、それは歓迎すべきことだ」と述べ、首脳会談に前向きな姿勢を示しました。一方で「まだ具体的な動きはない。しかし、おそらくトランプ氏が大統領執務室に入ったあと、何らかの動きがあるだろう」と述べ、トランプ氏の大統領就任後に具体的な動きが出てくるだろうという見方を示しました。

トランプ2.0政権は、米州主義の基盤創造に尽力しながら、ウクライナ戦争を始め中東情勢の安定化につとめ、東アジアの中国・台湾問題、南北朝鮮問題の解決、日米同盟の見直しなと、米国単独派遣体制を潰し、新たな多極化文明体制を築く大転換政策に取り組み始めるだろう。ただし、サイト管理者としては、米側陣営と非米側陣営が対立し、鎖国のような状態になるのは問題があるとの認識だ。対立を乗り越えて、世界の主要な文明体制が調和の方向に進み、新たな統一文明圏を創造していくことが、現代の人類に課せられた使命だと想定している。そのためにはやはり、欧米文明の根幹になり、近現代科学技術に基づいた資本主義体制を築き上げたアタナシウス派キリスト教の限界を乗り越え、超克する必要があるだろう。そして、統一文明の創造に向けて政治・経済・社会・軍事のすべての面から、新たな政策を提言、実行していかなければならない。まずは、ドル基軸通貨体制に代替できる国際決済システムの構築が必要だ。

 

 

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